大越国（現ベトナム北部）の陳朝期に焼かれた青花碗。小ぶりな高台から丸みを持って立ち上がり、口縁は端反りする。外面に雲文を、見込みに菊花文を軽やかな筆致で描き、高台内に鉄錆を塗る。ベトナム青花の初期に位置する作例で、14世紀前半の鉄絵の作品に同図案が描かれていることから、近い時期に焼かれたものと推測される。菊花文は古代中国の鞠水伝説に由来し、紅河デルタ周辺で発展した同地の器物において盛んに用いられた。純白の膚に線の細い絵付けが映える、瑞々しい一碗。

図録「Vietnamese Ceramics: A Separate Tradition」に類品所載。小さな釉の剥離が幾つか見られ、口縁が部分的にカセている。それ以外に目立った瑕疵は無く、状態は概ね良好。