1590〜1600年代に焼かれた絵唐津の筒向付。内田皿屋窯、または多久高麗窯の作。四方形に整えた筒型の器体を成し、柳、燕、沢瀉、縦縞を伸びやかに描く。口縁やや下に二本の沈線を廻らせ、長石釉を高台脇の際まで丁寧に施す。バラエティに富む情感豊かな絵付けも然る事ながら、緊張感の漂う凛然とした佇まいは同種の向付を凌駕する。同時期の志野・織部とも響き合う、茶陶唐津の逸品。

繊細に扱われてきたことが分かる無傷完品。伝世の過程で貫入が色付き、畳付きの手触りも滑らかなものになっている。「唐津 火入」と書かれた古箱に収まる。