李氏朝鮮時代中期に焼かれた平茶碗。箱に北鮮松坪出土と記される。粒子の粗い胎土に白化粧を施し、白濁した失透釉を高台脇まで掛ける。

咸鏡北道の松坪は日本植民地時代に浅川伯教が調査を行った会寧、明川のちょうど中間に位置していることから、そのいずれかの窯で焼かれたものが運ばれたと考える。但し、朝鮮北部に未だ知られていない窯址が散在していることは想像に容易く、会寧や明川以外の産である可能性も否定できない。

口縁に古い銀直しがある。高台に小さな欠けが数箇所ある以外、目立った瑕疵はない。