清朝期に焼かれた青花の碗。八卦を思わせる多面を成し、琵琶記や水滸伝などの文学作品を掛け合わせた絵付けを各面に描く。

漳州窯に類似の作例が見られるが、同窯は遷界令による貿易の禁止と住民の強制移住によって清初には廃絶している。本作はそこから少し時代の下る清朝前〜中期、安渓窯や永春窯など泉州の諸窯で産したものだろう。作行きには上手の感があり、海外の市場に向けて焼かれた可能性を窺わせる。軽妙洒脱な画風、伝世味溢れる見込みの艶が好ましい。

口縁部にくの字形の短いニュウと窯傷がある。他にも貫入に紛れたニュウがあるかもしれないが、状態は概ね良好。保存箱付き。